山岳 JOY (女医) メールマガジン・バックナンバー

山岳JOY(女医)メール(21)2014.10.5【火山を登る〜医療的問題 】

2014.10.05

こんにちは。

国際山岳医の大城和恵です。
このたびの御嶽山の噴火災害につきまして、心よりお見舞い申し上げます。
そして、救助活動にあたられる方々の安全を、願っております。

本日は、噴火に伴う医療的な問題を解説します。

本メールは、講演会などで御縁をいただき、今回から配信させて頂いてる方もいらっしゃいます。
配信ご不要の方は、お手数をおかけ致しますが、本アドレスまでご連絡下さいませ。

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一般的に、火山が噴火し、人が被害に遭う医療的な内容、対策を説明します。

★ 火山噴火時の医療的問題総論

 ▷原因による分類

  ・ 熱による傷害   水蒸気、熱いガス、熱い灰

  ・ 機械的な傷害   噴石、飛んでくる灰、泥流

  ・ 化学的な傷害   有毒ガス

の大きく3つに分けられます。

多くの噴火は、突然、激しく起こるため、人々が逃げる時間は殆どないのが実際です。

このため、これまでの報告では、怪我をする人に比べ、亡くなる方の比率が高くなっています。

 ▷病因から分類

  ・ 外傷    噴石、火砕性物質が飛んで来て、頭部や背中(体幹)に怪我する。

  ・ 気道熱傷  熱い水蒸気や灰を吸い込んで、気道が熱傷(やけど)すると浮腫んで窒息してしまう。

  ・ 熱傷(やけど) 水蒸気や熱い灰にそのまま曝される。 

       熱傷は怖い:熱傷の範囲が広い場合や深い場合、気道に起こった場合、
             皮膚の薄い子どもや高齢者は、非常に重篤で致命的になります。
  ・ 窒息 大量の灰を吸って呼吸ができなくなったり、有毒ガスで窒息する。


 噴火時にどこに居たかによって、受ける被害が異なってきます。


★有毒ガス
  火山噴火で噴き出すガスは、水蒸気H2Oが最も多く、次が二酸化炭素CO2、二酸化硫黄So2、

  ほかに、硫化水素H2Sなど。 

  特に危険なのは、二酸化炭素と硫化水素です。
    どちらも、空気より重いのが特徴。
    色がついていないので、目で見てわかりません。


  ・二酸化炭素CO2  20%以上の濃度になると、わずか数回呼吸をしただけでも、

            急激に低酸素血症、意識消失、呼吸麻痺から窒息を起こす。

  ・硫化水素     硫黄臭。高濃度を吸うと、ひと呼吸しただけで、青酸カリのように、

            細胞が呼吸できなくなり、死に至ってしまう。

  ・二酸化硫黄    粘膜の炎症を起こす。呼吸障害も来たし、脈拍、血圧を上げるが、

            直接の死因にはなりにくい

 ただ、噴火時にどのガスが出ているか、どのくらい出ているか、わかりません。

 いざ、噴火した場合、

 くぼ地等の低い場所にとどまらない方が、火山性ガスの影響を受けにくくなるでしょう。

★その他

 ・小さな灰、それ自体は生命へのリスクは低いですが、目や角膜の炎症を起こします。
  肺に吸い込まれると、喘息や肺の病気のある人は、病気を悪化させます。

 ・シェルターは安全か?
    安全なシェルターは、コンクリートでできたドーム状のものをイメージして下さい。
    平屋根のシェルターでは、10cm、屋根に灰がつもり、雨でも降ればつぶれます。
    大きな岩が飛んでくれば、つぶれます。
    シェルターは一時退避の場所になり得ますが、安全レベルは、噴火状況で異なります。

★火山を登る場合の注意点


 ▷日頃の登山と共通していること

  ・現地の気象情報を知る
 
  ・現在の噴火の警報レベルを知る

  ・地域の規制に従う

  ・現地の情報や状況に知識と経験のあるガイドと行く

  ・警察・家族に登山計画書を提出してから行く

  ・肌を露出しないように、帽子、長袖、長ズボン

  ・雨具、ヘッドライトを持参する


 ▷火山を登る際に留意すること

  ・3点セットの持参
    ヘルメット
    マスク
    ゴーグル
   
     頭への怪我を軽減、灰を吸い込まない、灰からの視界確保と目の保護

  ・ヘッドライト
     火山灰は煙りと異なり、光を通しません。暗いです!

  ・噴火時に何が危険かを知っておく
     □ 熱(水蒸気、灰)
     □ 有毒ガス
     □ 噴石
     □ 火砕流や泥流

  ・シェルターの位置を確認しておく

  ・噴火時のサインを早めに見つけるよう、注目しながら登る

  ・風向きを把握しておく

 
 ▷いざ、噴火した、という場合は?

  ・直ちにその場から離れる。遠ざかる。

  ・シェルターや大きな岩陰に逃げることも考える。

  ・頭部を覆う(厚手の帽子、ヘルメット、ザックなど)

  ・背中を覆う(ザック)

  ・火山性ガスは比重が重いので、くぼ地や低い所に逃げ込まない

  ・可能であれば、風上方向へ逃げる
     火山性ガスや灰の影響を受けにくい

  ・視界の確保に、ゴーグル、ヘッドライト


残念ながら、噴火してしまうと、絶対助かる方法、というのはありません。
少しでも、助かる確率を高めるためのことを、積み重ねるしかない、というのが、実際です。


登山は、素晴らしいスポーツですが、
自然に足を踏み入れる、ということは、火山ならずとも、
100%の安全が保障されていはいないことを、再認識しましょう。
それでも登山をされる場合は、厳しい環境に入るための準備(知識と装備と肉体)を、必ず行いましょう。  

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お気づきの点、ご質問、ご要望等ございましたら、本アドレス迄お寄せ下さい。

医学博士 大城 和恵
UIAA/IKAR/ISMM認定英国国際山岳医(UK Diploma in Mountain Medicine)
北海道警察山岳遭難救助アドバイザー医師 
日本内科学会認定内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本山岳協会医科学委員会常任委員  
日本登山医学会評議委員
日本登山医学会認定山岳医判定委員・実行委員・講師
日本登山医学会山岳ファーストエイド委員長

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