山岳 JOY (女医) メールマガジン・バックナンバー

【山岳 JOY(女医)メール16 】山での熱中症〈その1〉2012.8.1

2012.08.08

こんにちは。

国際山岳医の大城和恵です。
不定期ですが、山岳医療にかかわる情報発信をしていきたいと思います。
講演会などで御縁をいただき、今回から配信させて頂いてる方もいらっしゃいます。
配信ご不要の方は、お手数をおかけ致しますが、本アドレスまでご連絡下さいませ。

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本格的な夏山シーズンです。
この時期には、熱中症が増えます。

登山では、汗、呼吸、から、多くの水分と塩分を失い、登山中はいつも『かくれ脱水』状態になっています。
汗には、塩分が含まれています。
そのまま暑い環境下で運動し続けると、熱中症に至ることがあります。

☞熱中症は、重症度で判断し、対応するのが最近の考え方です。
 しかし、山では、具体的な方針があるとわかりやすいこと、救助要請の判断を知ること、が必要です。
 ここでは、重症度から理解する方法以外に、病状の種類(病型)説明しています。
 以下をご参考にして下さい。


山でおこる「熱中症」の種類は
1. 熱痙攣
2. 熱失神
3. 熱疲労
4. 熱射病
があります。
体温が上昇し、命の危険が及ぶのは、熱疲労熱射病です。
特に熱射病の場合、緊急性が高く、時間に余裕がありません!


1. 熱痙攣 ねつけいれん
『足がつった!』
これは、水分も足りないのですが、塩分が一層不足した状態です。
水は飲んでいたけど、塩分補給が不十分な時におこります。
塩分を含む水分を1ℓ飲みましょう。
  例:スポーツドリンク、経口補水液(OS-1など)。


2. 熱失神 ねつしっしん
『一過性の立ちくらみ』
歩くのをやめて、ふと立ち止まった時におこります。
これは水分と塩分の不足で、一時的に脳に血液がまわらなくなった状態です。
水平に横たわり(足を30度くらいあげてもよい)、水分と塩分のはいった飲料を1ℓ以上とると、比較的すぐに改善します。

3. 熱疲労 ねつひろう

『たちくらみ、めまい、疲労感、嘔気、頭痛、口渇、食欲低下』

   体温は36度〜39度と様々(腋窩や耳で計る)
   意識はしっかりしています。

   病院搬送のタイミングを逸すると、命を落としたり、後遺症の残ることがあります。

  ☆すぐに行うこと
    ・行動を中止
    ・2ℓの水+塩分補給
      (スポーツドリンク、経口補水液は糖分も含まれ吸収がよい。低血糖が潜在する場合にも有用)
    ・日陰へ移動
    ・衣服はゆるめる
    ・体を冷やす (体温>37℃ならば開始) "クーリング"
       ☞水で体を濡らし+あおいで蒸発を促進する
          注:なまぬるい水をかける。冷たい水は避ける

  ☆救助要請が必要な時  110番、119番
    ・30分しても回復の兆しがない場合
    ・2時間以上経っても完全に回復しない場合
         但し2時間後が日没なら早めに要請する
    ・病気がある人(高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病、脳梗塞等)
    ・65歳以上
    ・意識や行動がおかしくなった場合
     (わけのわからないことを言ったり、会話が噛み合ない、つまづく、手足が麻痺するなど)


4. 熱射病 ねっしゃびょう

『 意識がおかしい(判断力が鈍い、頭痛がひどい、反応が鈍い・反応が過剰、意識が無いなど)
  動きがおかしい(きちんと歩けない・動けない、全身痙攣、手足が動かないなどの麻痺 )
  体温39度以上 』 

     上記のどれかひとつでもあれば 熱射病です!

    致命率25〜50%との報告もありますので、正しい対応が不可欠です。
  
☆ 直ちに行なう3つ!
    1. 体を冷やす "クーリング"
    2. 救助要請   
    3. 命の危険を確認する ABC!
       A:意識が正常でない人は気道確保。
       B:呼吸をしているか確認。
       C:脈が触れるか触ってみる。

  ☆ 救助を待つ間にやること
     1. 体を冷やす "クーリング"
        ☞衣服はゆるめる
        ☞水で肌をびしょ濡れにする+扇ぐ
              【注】なまぬるい水 がよい
                布やガーゼ、薄い衣服を濡らすと、水が肌からこぼれにくい
                体表体温が38-39℃で止める (深部体温は、もう1℃程度低い)
      2. ABCを繰り返し確認 (生きているのか、コマメにチェックする)
          呼吸が無ければ人工呼吸、 脈が触れなければ心臓マッサージ。                
      3. 水分摂取、むせる場合は直ちに中止
        (むせなければ、スポーツドリンク、経口補水液を飲ませる。
          糖分も含まれ、吸収に優れ、低血糖が潜在する場合にも有用)
      4. 涼しい場所に移動
     


はい、今日はここまでです。ではまとめます。
【今日のポイント】
   ひとつひとつ、病名を覚える必要はありません。

熱中症まとめ


『最悪を招かない』ということが、非常に重要です。
最初の判断が、生死を分けることがあります。
特に65歳以上や、持病のある人は、致死率や、後遺症を起こしやすいのです。
救助隊や病院到着時によくなっていれば、あなたの処置が有効だったのです。
勇気を持って、早めの判断を!!!

お知らせ
  北海道警察山岳遭難救助隊と合同実施で、夏の熱中症・捻挫予防啓発活動を行っています。
  協力:STOP熱中症!・かくれ脱水委員会、株式会社大塚製薬工場、住友3M株式会社、旭岳ロープウェイ

  第1回 2012年7月15日報告 こちら
  第2回 2012年8月4日 旭岳姿見駅 朝6時〜 脱水予防無料指導(経口補水液サンプル配布)
              旭岳山頂 午前11時頃〜 無料テーピング
      詳しくはこちらをご覧下さい こちら

次回 山での熱中症!〈その2〉は、
 ・何を飲んだらいいのか?
 ・漢方薬は?
 ・予防策は?
などをテーマにします。
事例紹介は、〈その3〉で予定しています。

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お気づきの点、ご質問、ご要望等ございましたら、本アドレス迄お寄せ下さい。

医学博士 大城 和恵
UIAA/IKAR/ISMM認定英国国際山岳医(UK Diploma in Mountain Medicine)
北海道警察山岳遭難救助アドバイザー医師 
日本内科学会認定内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本山岳協会医科学委員会常任委員  
日本登山医学会評議委員
日本登山医学会認定山岳医判定委員
日本登山医学会認定山岳医委員会実行委員・講師
日本登山医学会First Aid in Mountain Rescue 委員長

sangakuinfo@sangakui.jp
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