山岳 JOY (女医) メールマガジン・バックナンバー

山岳JOY(女医)メール⑦2011.12.29号【凍傷②】

2012.01.20

こんにちは。

国際山岳医の大城和恵です。
本年は、私の活動へのご理解を賜り、誠にありがとうございました。
来年もどうぞ、ご指導、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

不定期ですが、山岳医療にかかわる情報発信をしていきたいと思います。
配信ご不要の方は、お手数をおかけ致しますが、本アドレスまでご連絡下さいませ。

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今日は前回に続き、凍傷の話です。

《前回のまとめ》

現場治療のポイント
【1】凍傷部位に、怪我や傷を負わない様にする。ガーゼ保護、ぶつけないなど。
【2】低体温症が潜在するので、低体温症の確認と処置を優先する。
【3】水分をよく摂る。
【4】薬--炎症を抑える目的で早期から内服する。イブプロフェン!
【5】凍った指をいつ解凍するのか判断をする。
   (山の中でお湯につけて一気に解かす(急速解凍)か、保温で自然経過での解凍に期待するか、
     下山して解凍するか)

解凍は、急速解凍、病院内での実施がよい

指を切断からできるだけ守るには
  再凍結を避ける
  解凍した手足は使わない
  解凍した手足を傷つけてはならない、感染させない
  解凍後24時間以内の病院治療

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《今日のお話 〜 現場でどうするか?》

ケース1.「凍傷を負った四肢で下山や退避をしなければならない時」
  1) 上記の【1】--【4】を実施する
  2) 凍傷した指を保護し、外傷を避ける。
   指の先、指の間にガーゼ等のパッドやあてものをする
   固定や副木等で動きを最小限にとどめるetc.

ケース2. 「現場で急速解凍する場合」
  1) 上記の【1】--【4】を実施する
   薬は解凍時の痛みを鎮める効果も兼ねる。
  2) 解凍後の下山手段、搬送先病院を確定する
  3) 解凍に必要なお湯、お湯を沸かす熱源、解凍後の保護材を用意する
  4) 急速解凍の方法
    ◆解凍を始めたなら最後迄終らせる。(だらだら時間をかけたり、途中で終了しない)
    ◆お湯に浸す方法がよい。
    ◆湯温は37-39℃。
     ・ 湯温は最高で42℃にとどめないと火傷する。
     ・ 37-42℃の温度範囲内では、解凍時間に殆ど差がない。
     ・ 温度が高いと、痛みで解凍に耐えられなくなる。
     ・ 温度を上げすぎるより、解凍の中断をしない温度で最後迄解凍する。
     ・ お湯は注ぎ足して、撹拌し、温度を保つ。
       お湯切れを起さない様に、最初にお湯の準備ができるか確認して始める。
     ・ 水温計がなければ、仲間の健康な手をお湯に浸し、30秒耐えられる温度か確認する。
     ・ お湯にイソジンなどの消毒液を入れてもよい。
    ◆指先が赤く血色が回復する迄解凍する。
     ・ 通常30分以上かかる。
     ・ 凍傷の程度により解凍にかかる時間は異なる。
  5) 解凍後
    ◆ 解凍後、タオルでこすらず、自然乾燥か丁寧に水気を吸い取るように拭く。
    ◆ 再凍結しない。再凍結はほぼ間違いなく切断になる。
    ◆ 傷をつけない。
    ◆ ガーゼで保護する。
     ・ 指の先、指の間も、クッション性があり皮膚に粘着しないガーゼで覆う。
          ⇒傷、感染、過度の乾燥を予防。疼痛軽減。感染予防。
     ・ ガーゼはきつく巻きすぎない。指が浮腫んでくるので、きつくまいて血行を阻害しない。
    □水疱
     ・ 通常、急速解凍後6-24時間でできてくる。
       痛みや水疱は血流が再開し、組織が生きている証拠である。
     ・ 水疱は潰さないのが、野外での通則。
     ・ 透明液の水疱が緊満して破裂しそうな場合、滅菌した(火であぶった)針で刺して水分を抜く。
       表皮はそのまま残しておく。その上から上記の様に、ガーゼで保護する。
     ・ 血性の水疱はできるだけ潰さないようにする。やはり、上記のように保護しておく。
       水疱破裂時に備え、創傷治癒用のクッション性のある吸収性ガーゼを使用しておくと、
       適度に水分を吸い、適度に創部を湿潤させる。
    ◆ 患部を挙上する。
      心臓より下げないことで、むくみと循環の悪化を防ぐ。
    ◆ 解凍した手足は使わない。歩かない。命に関わる時のみ使う、歩く。
    ◆ Hydrotherapy 温水治療
     ・ 解凍後1日1〜2回、37-39℃のお湯に浸す。
     ・ 時間などは科学的に未確立だが、おおよそ1回20-30分。
    □酸素 高度4000m以上では酸素投与し海抜と同程度の酸素濃度にする。
    □アロエジェル/クリームを塗布する  炎症を軽減する作用がある

 ◆ は医学的にかなり根拠があり、勧めるポイントです。
  HYDROTHERAPYは最近提唱されてきましたが、現場の医師は効果があると言っています。
 □は、科学的根拠は未確立ですが、経験的に悪く無さそうだ、ということです


 FAQ:水疱について、よくきかれる質問
  Q:水疱を破くか破かないか・・
  A:「水疱は破かない方が悪い事は起らなかった」というのが、これまでの凍傷治療の結果です。
    これは、経験的に認知されてきているもので、 絶対破ってはならない、と言い切るには、
    科学的根拠が未確立です。しかし、最近、血性の水疱はできるだけ破かない方がよい、
    という意見は支持されています。
    これは血性水疱成分内に、凍傷の治癒に良い働きをする物質が含まれているからです。

はい。
今日はここまでです。(2011.12.29)


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年末年始、山に行かれる方、どうぞお気をつけて楽しまれて下さい。
お気づきの点、ご質問、ご要望等ございましたら、本アドレス迄お寄せ下さい。

では、よいお年をお迎え下さい!


医学博士 大城 和恵
UIAA/IKAR/ISMM認定英国国際山岳医(UK Diploma in Mountain Medicine)
Leicester大学山岳医療修士
北海道警察山岳遭難救助アドバイザー医師   
日本登山医学会評議委員
日本登山医学会認定山岳医判定委員
日本登山医学会認定山岳医委員会実行委員・講師
日本登山医学会山岳ファーストエイド委員長

sangakuinfo@sangakui.jp
http://www.sangakui.jp/